四方山話
四方山話
ある親方の呟き5
お相撲さんと食事
お相撲さんは毎日『ちゃんこ』を食べるんですか?
ちゃんこイコールお相撲さんは一般的にイメージする食事でしょう。
実はこの『ちゃんこ』という言葉はお相撲さんの作って食べる食事全般を意味しており、料理の名前ではありません。
ですからお相撲さんがカレーや焼き肉を作って食べたらそれは『ちゃんこ』なんですね。
大人数で大男が食事するので、継ぎ足しながら食べる料理の『鍋』が手間がかからず効率的で栄養もあって良しとされてきました。
毎日の食事なので味付けも、醤油、味噌、ポン酢でチリなど千差万別ですが、材料は差し入れや冷蔵庫の状況をみながらと普通の家庭の食事と同じです。
最近の力士は肉を好みますが、以前は魚が主流でした。
代表的なのは『アラ』と言われ関西では『クエ』と呼ばれる高級魚。
20年位前までは九州場所中3回くらいタニマチから差し入れがあり、11月は市場価格も高騰する人気の魚でしたが今はさっぱり無くなりましたね。
酒石酸と呼ばれる酸っぱい粉をお湯で溶いて醤油と1対1で作ったポン酢に薬味のネギを浮かせて食べる『アラチリ』は、脂のたっぷりのった白身に相まって絶品ちゃんこ鍋でした。
さらに箸にひとつまみの味噌をどんぶりに取り、出汁のしみでた鍋のスープを入れれば即席味噌汁の完成。仕上げは残ったポン酢とご飯を入れてお茶漬けサラサラ。
えもいわれぬ味わいでした。
相撲部屋の鍋は肉と魚を一緒に入れたりしません。それは俗に『寄せ鍋』になり本来の食材の味がわからなくなります。そしておじやも禁止。
上から順番に鍋を食べるのでおじやにしたらそれで終わってしまうでしょ。イワシやサンマ、アンコウや穴子に水タコもチリポン酢で食べますが、鰤や鰆は『焚き食い』といってすき焼きで食べます。
そうやって食材によって味付けを変えたり季節の旬を食べる事で、お相撲さんは美食と呼ばれて来たかもしれませんし、ソーセージを入れるキムチ鍋なんて画期的な事でした。
しかしこのちゃんこも、コンビニやファーストフードにカップラーメンが当たり前の世代が入門してきた事によりだんだん変わってきました。ー食抜いても外に行けば簡単に手に入る。
次回は外で食べたくなくなる料理の話といきましょ。
お相撲さんの料理
『ソップ焚き』
お相撲を代表する鍋。ソップとは鶏ガラの事で、鶏ガラで出汁をとり、日本人好みの醤油、みりん、さとうで味付けしたシンプルな鳥なべです。
鍋料理は、味付け鍋とすき焼き鍋とチリ鍋の代表的に3つに分かれます。味付け鍋に入れる材料で必ず必要なのは、油揚げとごぽうとニラ。
出汁を吸った油揚げと奥深い味を出すささがきゴボウに食欲増進のニラの風味は昔から入れられてきました。
『豚味噌』
濃いめの豚汁のようなものですが、針生姜を入れるとさっぱりとして食欲が増します。またピーマンを、葉もの野菜としてしれると意外といけるんです。
『鳥すき』
すき焼きの牛肉が鶏肉になるんですが、とき卵を付けずにマヨネーズを付けて食べるのがずっと前から流行ってますね。
『塩バター』
味付け鍋の材料にソーセージと塩とバターを丸ごと入れた洋風鍋。残った鍋にキムチの素を入れたら『キムチ鍋』の完成。
『チリ』
イワシやサンマはぶつ切りにして内臓を出してお湯の中へ。アナゴは開いた状態で切り身に。ミズダコは塩でヌメリが無くなるまで揉んで、頭と足を切り離す。頭は下茄でし一口大に切る。足は5センチ位にカット。
いずれもお湯から炊いて、豆腐、葉もの野菜を入れてポン酢で食べます。タコのスミで真っ黒になった鍋でご飯を食べるのは辛かった。
『鰆の焚き食い』
鰆は切り身にしてみりんに浸けて一晩寝かせる。後は浸けたみりんごとすき焼きを作る要領で調理して行くが、力士も好き嫌いが分かれる料理かな。
ではまた!