四方山話
四方山話
ある親方の呟き13
今スポーツ界で活躍してる人達に共通してるのは、小さい時から始めてる事じゃないでしょうか。
ゴルフ、水泳、野球等はジュニアと呼ばれ本人より親御さんの方が一生懸命とか、相撲もひと昔前は中卒の純白無垢な方が経験者より変な癖もなく教えやすいと言って、若い金の卵をスカウトしてまわりました。そして同じ屋根の下で生活して人間修行の場として教育して成長するわけです。
ですが勝負の世界ですから志半ばで引退したり逃げたりする方が多いのも事実です。辞めた時のために高校、大学を卒業してからと修行より就職先として相撲を選ぶ人も増えてきました。
親方として協会に残るのは105人と決まってます。晴れて親方になって定年退職まで安泰という考えは大きな間違いです。今まで稽古で培った経験や技を伝えるのはもちろんですが大所帯の生活基盤を支える経営者としての責任があります。
現役時代が『表の修行』なら、親方業は『裏の修行』ですね。ちょんまげ時代と同じ感覚でちやほやされるなんて勘違いです。30ちょっとで辞めても世間一般でしたら係長でしょうか。
両国国技館を無借金で建設した春日野理事長の話は有名ですが、それには平幕でありながら理事長まで上りつめた、その前の武蔵川理事長による確かな経営手腕による財政があったからです。そしてそれを春日野の手柄として、後身に協会運営を託す潔さと大器はまさに経営者の鑑でしょう。その大事業を成し遂げた業績によって春日野理事長の長期政権を見込んだ先見の明も見事でした。
武蔵川回顧録の第一章に『相撲はたえず発展していく』と記してますが、それは『変わる常識変わらぬ鉄則』に他ならない言葉です。
ちなみに武蔵川親方は第8代出羽海親方で師匠時代はたった8年間です。その間に平幕佐田の山を横綱に育てあげ、三段目だった北の富士を大関に、関脇福の花や後の横綱三重の海をスカウトした名伯楽でもありました。