四方山話ある親方の呟き
四方山話ある親方の呟き
拾七話
力士のセカンドキャリア
始まりがあれば終わりがあります。
お相撲さんとして一生懸命尽くしたとしても晴れて関取として出世するのは一握り。
関取として活躍しても親方として残るのは更に狭き門です。
さて引退となると第2の人生の方が長くなるわけです。
若い衆なら稽古場で断髪式となります。
これまでは養成員として衣食住の心配せず生活してきましたがこれからは全て自分もちです。勤め先から月給はもらえるようになるでしょうがその中で生活し貯金も必要でしょう。
多少体調悪くても会社を休むわけにはいかず、仕事場も上から下ではなく通勤です。トイレットペーパーも気にして使わないと全て自分もちです。
力士時代は得意気にちゃんこ番として腕をふるってたとしても、それは豊富な差し入れや弟弟子を使って光熱費を気にせずに作ってたわけで、商売となると美味しいだけじゃいけません。
ふと気がつくと力士時代はなんと恵まれたのかと。
特別扱いが勘違いになり後悔は先に立たずです。
それでも真面目に成功して部屋に顔を出してくるのは可愛いもんです。
青春時代を相撲にささげ改めて食べるちゃんこに誰もが懐かしさを感じて帰っていきます。
私はたまたま相撲という土俵で関取となっただけで、皆さんもそれぞれの土俵で頑張っています。私が皆さんの土俵で仕事したとしても一人前になったか自信はありません。
そういう謙虚な気持ちで日々を過ごしたいものです。