四方山話
四方山話
ある親方の呟き3
令和2年。
日本中が2020東京オリンピック開催ということで、にぎやかな雰囲気で迎えた初場所は幕尻徳勝龍の劇的な優勝で幕を閉じました。
いよいよ次は三月場所です。
ところが中国で発生した新型コロナウイルスが日本にもメディアを通じて報道され始めました。
巷ではお湯を飲んだら治るや、若い人は感染しないと高をくくってましたが、これが大きな間違い、長い悪夢の始まりでした。
2月、感染者数は目に見えて増えていき、死者数も増加。3月は世界中がコロナショックです。
大相撲は団体生活です。ましてやチケットは即日完売盛況。
初日まで1週間というタイミングで緊急理事会が招集され、スポーツ界に先駆けて無観客開催という苦渋の決断をしました。
大相撲は15日間の興行です。
無観客はつまり収入が無いという事。それは協会のみならずそれに関わる全ての原資がなくなるという前代未聞の事態です。理事長は『1人でも協会員が感染したら中止する』と厳しい条件をつけました。
案内所は閉鎖。膨大な土産物や飲食物は全てキャンセル。
NHKのみ放映された、シーンとした府立体育館は生涯忘れえぬ春場所となりました。
ともあれ無事に千秋楽を終えた安堵感は感動すらしましたが、続く五月場所は緊急事態宣言により中止。 新型コロナウイルスに翻弄されながらの制限開催は、令和3年は地方場所を東京開催に移し外出禁止。
大相撲は年6回の本場所で動いてます。カレンダーの正月休みやお盆休みゴールデンウィークは皆無です。
仕方のない事とはいえ自粛とクラスターを繰り返し、元気なお相撲さんはすっかりおとなしいものになりました。
そしてお客様に目を向けると、コロナ前は会社の接待や常連客と呼ばれる好角家の方々が占めていましたが、コロナ渦になると会社や団体客は無くなり、その代わり新規のお客さんが増えたように思います。
やっぱり大相撲は大衆娯楽です。昔から旦那衆や家族でわいわい飲み食いして声を出して贔屓力士を応援して会場が一体となって楽しむもんで、しらふでみるもんじゃありません。
物足りなさをひしひし感じながら、そうやって令和5年はやって来ました。
初場所は、お酒一本というルールでしたが、三月場所は案内所も開いて若い衆も戻りお客さんの笑顔に満ちていました。
なにわの春は相撲太鼓の音に乗ってやってくる。