平成25年11月場所だより
1年納めの大相撲九州場所は11月10日から福岡国際センターで始まります。人気回復の兆しが見えてきた2013年。内容の濃い相撲で締めくくれるでしょうか。
優勝争いは依然として横綱白鵬が中心と言わざるを得ません。稽古量が増える気配はないですが、天才的ともいえる相撲勘や運動神経で白星に結びつけています。まだ28歳と若いのも利点です。自身2度目の5連覇を目指します。
白鵬と互角の勝負を唯一できる力士が大関稀勢の里です。日本人力士であるだけでなく、第一人者を本気にさせる実力を備えていることがこの男への期待感を呼んでいます。日馬富士が休場しなければ、今場所も両雄は14日目に激突するでしょう。稀勢の里としては取りこぼしを一つでも減らし、相星か1差で対戦する展開に持ち込めるか。賜杯の行方を懸けた大一番となれば、1年最後のクライマックスとなります。和製横綱誕生への初夢を来年につなげてほしいものです。
2場所連続10勝止まりの横綱日馬富士は存在感が薄くなる一方です。序盤で金星を献上し、終盤に帳尻合わせのように白星を2桁に乗せるパターンが定着してきました。横綱昇進からちょうど1年。いつまでも周囲は待ってくれません。実力や安定感では白鵬はもちろん、稀勢の里にも劣っているだけに、相当な奮起が望まれます。
鶴竜と琴奨菊、かど番の琴欧洲にはここ数場所の相撲を見ると、あまり多くは期待できません。日馬富士同様、せめて終盤戦まで白鵬に食らいついてほしいものです。
注目したいのは秋場所で11勝を挙げた関脇豪栄道です。関脇在位は10場所連続を数え、大関とりに向けて機は熟してきました。今場所も2桁勝利をマークすれば、年明けの初場所はいよいよ大関昇進に挑みます。出身地の大阪で開かれる春場所で新大関として凱旋することが最大の目標です。
途中休場したとはいえ、新入幕の秋場所を大いに盛り上げた新星・遠藤は幕内中堅まで浮上します。関脇に復帰した栃煌山、平幕転落から巻き返しを期す妙義龍のほか、ご当地場所で小結に返り咲いた松鳳山、エジプト出身で新入幕の大砂嵐など楽しみな力士はたくさんいます。場所中に冬の香りを漂わせる九州場所ですが、土俵は熱くなりそうです。
平成25年9月場所だより
大相撲秋場所は9月15日から東京・両国国技館で始まります。大関稀勢の里が綱とりに挑んだ名古屋場所のような大きな話題こそありませんが、台頭してきた若手の活躍次第では興味深い場所になりそうです。
優勝争いは4連覇を狙う横綱白鵬が中心です。先場所でモンゴル出身の先輩横綱朝青龍を抜いて26度目の優勝を達成。大きな節目となる30回が刻一刻と迫ってきました。
しかし先場所は終盤に右脇腹を痛めたように、28歳の肉体は徐々に衰えてきました。ここ数年の慢性的な稽古不足がたたっているのでしょう。相撲内容も力強い四つ相撲は影を潜め、手ごわい相手ならなりふり構わずいなしたり、手繰ったりする相撲で何とか白星を重ねている印象です。他の力士が付け入る隙は十分にあります。
稀勢の里は浮き沈みの激しい綱とり場所でした。初挑戦の重圧からか前半戦だけで3敗。それでも終盤に両横綱を圧倒しました。しかも白鵬の連勝を43で止めた一番は出色でしたが、千秋楽に痛い星を落として綱とりは振り出しに戻りました。白鵬戦で見せたような爆発力は魅力的ですが、横綱を目指すには安定感がもう一つ足りません。とにかく攻め急がず、冷静に足を運ぶことが大事です。勝ちっ放しで白鵬戦を迎えれば、秋場所は最高の盛り上がりを見せるでしょう。出直しに期待します。
稀勢の里以外の大関陣や横綱日馬富士よりも、注目は関脇以下の若手力士です。今場所は23歳の高安が新小結となり、平成以降初の関取に名乗りを上げます。思い切って技を仕掛ける新鋭は上位陣には脅威です。大阪府交野市出身の勢も上位に復帰。場所ごとに地力がアップし、体の大きさを生かしつつあります。そして注目は新入幕の遠藤。14勝1敗で新十両優勝した先場所の活躍は記憶に新しく、幕下10枚目格付け出しからわずか4場所で幕内力士となりました。均整の取れた体にセンス抜群の取り口は、豊かな将来性を感じさせます。まだざんばら髪にもならないホープはどこまで白星を積み重ねるでしょうか。妙義龍に大阪府寝屋川市出身の豪栄道の両関脇、再小結の栃煌山は両横綱を倒しての2桁勝利で大関昇進レースを引っ張ってほしいものです。
先場所は最後に帳尻合わせのように2桁勝利に乗せた日馬富士ですが、このままでは最高位の責任を果たせないかもしれません。常にどこかが痛そうで、大関時代のはつらつさが消えました。今場所も早々と優勝争いから脱落するようでは、周囲が騒がしくなります。試練の秋となるでしょう。
8月は水泳や陸上、柔道の世界選手権で日本人選手が奮闘し、2020年五輪開催都市に東京が選ばれるかもしれません。アマチュアスポーツの盛り上がりに負けないように、伝統国技には存在感を示してもらいましょう。